詩のこころ

今週の仕事で、こんな詩を読みました。

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「生命は」           吉野 弘


生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする


生命はすべて
そのなかに欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ


世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?


花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光をまとって飛んできている


私も あるとき
誰かのための虻だったろう


あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない


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この詩は、東京書籍の中学3年生の国語の教科書に載っているようです。
詩人が50代になってから、庭に咲く芙蓉の花を見ているとき、この詩が生まれたそうです。10代の頃に、こういう詩と出会うことは、とても大切なことのように思えました。
久しぶりに詩をじっくり読んで、詩人は命がけで宝石のような言葉を紡ぐひとなのだと感じました。


私も、もっと言葉を大切に使わないといけない…



長女は最近、こんな本を気に入って1人で黙々と読んでいます。

いちねんせい

いちねんせい

詩に親しめるのは、いいことだなあと思って見ています。