星条旗よ永遠なれ

1か月ほど前、来年の1月に、大阪のザ・シンフォニーホールで公演される、シエナ・ウインド・オーケストラのコンサートのチケットを取った。


シエナ・ウインド・オーケストラは、1990年に結成されたプロの吹奏楽オーケストラ(HP→http://www.sienawind.com/)。2002年からは、佐渡裕が首席指揮者を務め、今や日本を代表する吹奏楽オーケストラのひとつ。
私が小学生の時、初めてフルートと出会ったバンドの先輩が、10年ほど前から、シエナのフルート・ピッコロ奏者として活動している。一度、その音楽を、生で聴いてみたいと思っていた。


初めて彼女と出会った時、私は小学4年生で、彼女は中学2年生だったが、フルートを吹く彼女の「美しい」としか表現しようのない姿は、大袈裟でなく今でも私の心に鮮烈に焼きついていて、忘れられない。フルートを吹く彼女の周りだけ、空気がスッと違うようだった。あの時の彼女が、わずか中学生だったなんて、私は今でも信じられない。
その後、私は県内のソロコンテストで何度か賞をもらったり、アンサンブルコンテストで何度か東海大会に行ったりした。高校3年生の時、私が文学部への進学を決めた時には、学校の先生たちから「お前は音大に行くのかと思っていた」と言われた。けれども、音大なんて私にとってはとんでもない話…。私の中には常に、小学生の時から見続けていた彼女の、フルートに対する圧倒的な姿があった。自分がどう頑張っても到達できるレベルではない。フルートに向かう魂のようなものが、まったく違う。子ども心ながら、凄まじい世界だと感じていた。
でも、彼女には、そういうものさえも軽々と越えてしまうような、フルートに対するキラキラした気持ちがいつもあったように思う。素敵な人だ。
彼女は東京芸大を卒業後、シエナ・ウインド・オーケストラを始め、数々のプロオーケストラや劇団四季のフルート奏者として活躍している。


シエナ・ウインド・オーケストラのコンサートでは毎回、アンコールに、スーザの代表的なマーチ「星条旗よ永遠なれ」が演奏される(吹奏楽の経験者であれば、誰でも1度は耳にし、あるいは演奏しているであろう、有名な曲だ)。そしてその時には毎回、客席からの飛び入り演奏参加が呼びかけられる。
これは、「楽器に触れる楽しさを知った人たちに、その素晴らしさをいつまでも忘れないでほしい」という、佐渡裕氏の提案で始まったのだという。最近では、ステージに上る人が溢れんばかりなのだそうだ。
私はそれを、シエナのHPで知った。吹奏楽で使われる楽器のみならず、ホールに持ち込める楽器なら何でもOKだという(歌で参加することもできる)。「…これは私も絶対フルートを持っていかねば!」と意気込んだ。
当日の「星条旗」ではピッコロを演奏するであろう彼女に、ドキドキしながら久しぶりにメールを送ってみると、「舞台で一緒に吹こうよーーー♪」という返事を頂いた。


この曲はかつて、ピッコロパートも、フルートパートも、オーボエパートも、演奏したことがある。この曲を吹きながらパレードしたこともあるから、暗譜したこともある。
確か実家に楽譜があったはず…と、先日の帰省の折に、実家のクローゼットを探してみたのだが、度重なる引っ越しや片づけで紛れてしまったのか、どうしても見つからなかった。ちょっと困って、シエナの演奏会を聴きに行ったことのあるトランペット吹きの先輩に電話をしてみると、「当日は、シエナのメンバーが、譜面台にA3くらいの大きさの楽譜を用意してくれるよ」とのこと!それなら、CDを聴いて音を思い出しながら、事前にある程度音取りをしておけば、なんとか吹けるかも…。


今日の夕方、久しぶりに押入れからフルートを取り出して磨き、シエナのCD(『ブラスの祭典』)で音を確認しながら、「星条旗よ永遠なれ」の音を取ってみた。京子の前でフルートを吹いたのは、1年ぶりくらいだと思う。

ブラスの祭典

ブラスの祭典


前に京子の前でフルートを吹いた時には、京子はまだ7か月くらいで、全然何だかわかっていなかったが、今日は、私がフルートを取り出すと目をまんまるくした。そして、私が少し音を出してから、「これはフルート」と言うと、さあ今度は自分が吹く番だと思ったらしく、フルートに向かって両腕を伸ばして、「じゅぶんで!じゅぶんで!(自分で!)」。
さすがに、私の大事なフルートでは遊ばせられないので、「京ちゃんがもっと大きくなったら、このフルートあげるよ」と言うと、京子もオウム返しに、「おおきくなったら」と言っていた。
京子に、私が小学生の時に両親が買ってくれたこのフルートを譲って、そして私はいつの日にかと憧れる総銀製のフルートを手に入れて、デュエットしたりできる日が来るのかな…。…夢…。


久しぶりに吹いたものだから、フルートの音は全然響かず、まずはひとつひとつの音を丁寧に鳴らしていくところからコツコツと練習を始めないとなあ…と再確認…。
CDの彼女のピッコロは、やはり見事としか言いようがなかった…。CDなのに、思わずうっとりしてしまった。かの有名なピッコロのオブリガートは言うまでもなく、中間部のメロディー部分が綺麗…。ここだけは私も、なんだかその気になって気持ち良く練習…(もちろんまだまだまだまだ…やけど)。
CDを流しておくと、京子は、最後の一番盛り上がるグランディオーソの部分で、自分も腕を振って部屋の中を楽しそうに行進していた。やっぱり、マーチのリズムって自然に行進するんだ…と、納得…。


コンサートは、夫と一緒に聴きに行く(京子は義父母に預かってもらって…)。
コンサートを聴きに出かけること自体が、本当に久しぶり。産後は、またしばらく出かけられなくなるから、出産前の大きな楽しみだ。お腹の子にも聴かせてあげたい。しかも、なんと、あの佐渡さんの指揮で(しかもフルートは佐渡さんの真正面!!大興奮!!)、シエナと同じステージで、フルートが吹けるなんて…。体調を整えて、なんとか行けますように…。
さて、少しずつ、フルートの音出し、がんばろう☆