西陣散策

今日は、私が京都に住んでいた頃お世話になった大家さんが、西陣の方に新しい家を建てて引っ越しをされたので、その新居に夫と京子と一緒におじゃましてきた。
かつて私が友人2人と一緒に暮らしていた七条の古い家が、今年の3月に取り壊しになったことを以前書いた(詳しくは3月5日の日記「桃の節句、そして別れ」→http://d.hatena.ne.jp/tamago-ayako/20070305)。その後、大家さんから転居のご挨拶の葉書を頂き、電話で話すことができて、「京子ちゃんのお顔も見たいわあ〜。ぜひ遊びに来とおくれやす」とお誘いを頂いていた。…というわけで、今日は3人で遠慮なくおじゃましてきてしまったのだ。奇しくも、京子の2度目の京都は、1度目の京都の続きを訪ねる旅(日帰りだけど)になった。


大家さんの新しいお家は、千本釈迦堂のすぐ近くにあった。私は京都に6年住んでいたけれど、この界隈にはほとんど来たことがなかった。
小さな古い家々が軒を連ね、細い路地にはあじさいが咲き、西陣らしく織物や組みひもなどの小さな店や工房が多い。「裏の路地に入ると、西陣織の機の音も聴こえてきますねん」。…まるで川端康成の『古都』の世界だなあと思った。もちろん今は古い家々の間にずい分新しい家が建って、その風情もだいぶ変わっているに違いないけれど、おそらくその頃と変わらない場所も静かにそこにはあるのだろうと思った。そういうものを感じる町だった。
大家さんご夫婦も、新しい町と生活がとても気に入っている様子、お元気そうな様子で、なんだか私たちのほうが元気を分けてもらった。2人とも京子を見て、まるで孫に会うように喜んでくれた。京子も、初めて会う大家さんご夫婦なのに、まったく物おじせず、逆に親がちょっと恐縮してしまうくらい慣れ慣れしくて、おばさんに抱っこをねだって外に連れていってもらったり、おじさんの膝にちょこんと座って遊んだりしていた。たくさんのお菓子とお茶をごちそうになり、すっかり長居をしてしまった。


お茶をいただいた後、大家のおばさんと私たち3人で、千本釈迦堂から北野天満宮上七軒の通りを、ぐるりと散歩した。私は、千本釈迦堂は初めて。

千本釈迦堂の門前にて。(京子は寝る寸前…!)
入口は細いのだけれど奥は深くて、本当に清らかな感じのする美しい寺に驚いた。参拝客の姿はほとんどなく、少し傾きかけた日の射す境内はとても静かだった。写真の石畳も美しいけれど、門をくぐると楠の大木と、枝が地面に着くほどに垂れた阿亀桜の豊かな緑、その奥に立派な檜皮葺きの本堂。その色のコントラストの鮮やかさに見とれた。今日ここでしか見られない、感じられない風景がある、目の前にある以上に何かが溢れ出してもったいないような感覚に、久しぶりにおそわれて、やはり今日はここへ来る日だったのだ、と思った。梅雨に入る前の京都に来たいと、このところずっと思っていた。
本堂の扉は気持ちよく大きく開け放たれ、その奥には鎌倉時代の美しい仏像の数々がある…めちゃくちゃ見たかったけれど、大家さん宅で大はりきりだった京子が、千本釈迦堂の境内に着いた時点で爆睡に入ってしまったので、今日は断念。次回の楽しみにとっておくことに。

↑本堂の前にて大家さんと。今日の夕方に見た千本釈迦堂の美しさは、忘れがたい(忘れたくない…!)。
こんなお寺に来ると、やっぱり京都はいいなあ…と思ってしまう。


爆睡京子の太い両足(ハダシ)がにょきっと突き出しているベビーカーを転がして、私たち夫婦と大家のおばさんは、北野天満宮にお参りし、上七軒の風情を楽しんで歩いた。
西陣界隈、面白そうな気になるお店や場所がいっぱいで、わくわくした。次回もおそらくきっと西陣!私たちの新しい京都になりそうだ。