初めての

先週木曜日の夜は、日本シリーズ日本ハムが優勝して新庄選手が胴上げされたらしいのだけれど、私も夫も翌日になるまで全然知らなかった。それどころではなく…
京子が生まれて初めて吐いた。6時に離乳食を食べて8時にお風呂から上がって授乳していたとき、それまで元気だった京子が突然ガバッガバッと吐いた。私も夫もびっくりしてとりあえず吐いたものを片付け(ほとんど私が浴びた)、京子に白湯を飲ませてみたのだが、そのあとまた噴水のようにガバッガバッガバッと吐いた。夕方に食べたパン粥もサツマイモもみんな出た。1回目に吐いた後にはケラケラと笑っていた京子だが、2回目に吐いた後は顔色が青くなりぐったりとしていた。熱をはかってみると、平熱より少し低いくらい。
慌てて市の休日夜間診療所に電話した(うちの市には小児救急病院がなく、市のメディカルセンターが夜間の小児救急を担っている)。そこが開くのは夜10時からで、留守番電話でそれまで担当する病院の電話番号が告げられた。その番号にかけてみると市内のH病院。小児科の先生は帰宅したということで、県立医大病院に電話してくださいと言われた。県立医大病院にかけてみると、今夜は小児科の担当ではないということで、天理市の病院に小児科医がいますと言われた。たらい回しでだんだん腹が立ってきた。天理の病院にかけてようやく小児科の先生がいた。幸い感じのいい女医さんで、容態を聞いて丁寧に応対してくれた。その頃には京子もウトウトと眠りかけていた。京子の様子を話すと天理の病院の先生は、「今から寒い中をここまで連れてくるのは大変ですし、1時間後にはそちらの市の休日夜間診療所が開きますから、まずそこで診てもらうのがいいんじゃないかと思います。もし緊急であれば、こちらに搬送されますし」とのことだった。10時になるまで、出来上がっていたクリームシチュー(…)を食べながら京子の様子を見つつ待った。10時にもう一度休日夜間診療所に電話してみると、「とりあえず連れてきてください」と言われた。
生後4か月〜2歳くらいの子どもが、熱がなくて嘔吐を繰り返すとき(かつ、痛がって泣くとき)には、まず一刻を争う「腸重積」という病気を疑わなければならないらしい。これは腸が腸の中に入りこんでしまう病気で、発作が起こって時間がたつと、入りこんでしまった部分の血液のめぐりが悪くなって腸が腐って穴があき、腹膜炎を起こして手遅れになるそうだ。「あらゆる病気のなかで、これほど早期診断の大事な病気はなく、母親の責任の重大な病気はない」、「赤ちゃんをもつ母親は、ほかのことはみんな忘れても、腸重積だけはおぼえていてほしい」と、岩波書店の『育児の百科』には書いてある。
私たちはそんなことは全然知らず、あとで『育児の百科』を読んで知ったのだけれど、京子を毛布にくるんで休日夜間診療所へ連れて行くと小児科医の先生が、「腸重積という怖い病気でないかまず調べます」と言って、京子に浣腸をして便を調べた(腸重積の場合は血便が出る)。幸い京子は「いいうんちしてました」ということで、診断は「胃腸に何か菌がついたんでしょう」。吐き止めの坐薬と整腸剤を1日分もらい、「明日もう一度かかりつけの小児科に行ってください」と言われて、その夜は帰った。京子は、浣腸はされるわ坐薬は入れられるわなんだか嫌なことばっかりで、ぎゃーぎゃー泣き疲れた様子で寝た。翌朝、近所のかかりつけの小児科で診てもらったときにも、やはり先生から腸重積という言葉が出たが、「もしそれやったら今頃大変なことになってます」とのこと。熱もないし風邪の症状もないし、「胃腸炎の始まりでしょう」と言われた。
夕方、事の顛末を電話で母に話すと、母は私が心ひそかに思っていたことを口にした。「食べ過ぎやらー」。吐いた日、京子は朝10時にお粥・かぼちゃ・しらす干し(湯通ししてつぶしたもの)・ヨーグルトを食べ、夕方6時にパン粥・ゆで卵の黄身・サツマイモのマッシュ・バナナを食べた。京子が何でもパクパク食べてくれるので、私も調子にのってあげすぎていたのかもしれない。母いわく、「調子よく食べとったけど、がんばっとったんやないの?まだじゅうぶん消化器官ができてないから、限界がきたんやわ」。ずっとみているけれど風邪の様子は全くないし、ひょっとしたらそうではないかと私も思っていた。おそらく京子の体が「助けて」のサインを出してきたのだ。ごめんね、京子…。
小児科で出してもらった吐き止めの水薬と整腸剤の粉薬を京子はちゃんと飲みきってくれて、昨日あたりからようやくいつもの元気なオタケビ京子が戻ってきた(先週末は笑顔が少なかった)。離乳食は、またパン粥をスプーンひとさじからそーっとあげている。子どもは一直線にウナギのぼりの成長をしていくのではなく、行きつ戻りつしながららせん状に成長していくのだと母は言った。
それにしても、京子の初めての病気は「食べ過ぎによる消化不良」か…(恐ろしい腸重積でなくてほんとによかった)。ともあれ、京子は昨日で満7か月になった。