先週、久しぶりに1人で京都へ行ってきた。京都国立博物館で開催中の「大絵巻展」を観たいと思ったから。博物館の辺りは6年間暮らした懐かしい界隈だ。京阪七条駅で降りて学生時代を懐かしみながら博物館の前までたどりつき、さあ入場しようとしたら係員の女性がせかせかした口ぶりで「ただいま2時間待ちとなっておりますが、よろしいですか?」と言う。…2時間待ち?!耳を疑った。京都国立博物館のそんな混雑ぶりはかつて見たことも聞いたこともない。重厚な建物の中には、いつだってすいすいと入れたはず…。青葉の美しい広々とした庭園の遥か奥のほうにある建物の様子をうかがってみると、建物の入り口で入場制限を行っているらしく、入り口付近に設けられたテントの下にテーマパークの乗り物にでも乗るときのようなずらずらとした行列が垣間見えた。国宝の絵巻が何点も出ているせいか、異常なほどの大盛況ぶりだ。万博を思い出した…。しかし家で留守番をしている夫と京子を思い浮かべると、とても2時間なんて並んではいられない。そもそも私は並ぶのが大嫌い。その時間ぶん、ほかの有意義な過ごしかたを探したくなる。有名な絵巻がたくさん観られるのを楽しみにして京都まで来たけれど、人通りの少ない懐かしい通りを散歩して買い物をして帰ることにした。
それにしても、奈良の小さい町に住み慣れると、久しぶりの京都のバスや観光客や修学旅行生の多さが目まぐるしくうつった。世田谷から奈良に引っ越してきた1年前は人や店の少なさを淋しく感じたものだったが、つくづく、どこも住めば都なのだ。奈良の緑の気持ちよさ、空の広さに、今は心が落ち着く。大好きな京都に出かけて奈良をそんなふうに感じたのは初めてだったので、我ながらいささか驚いた。子育てをするようになってからの、心境の変化かな…。
博物館のそばにある小さなフレンチ・レストランで昼食をとり、七条通の和菓子屋で麩饅頭を買い、鴨川や高瀬川沿いの道を少し散歩し、京都駅までぶらぶらと歩いた。
「ゆっくり気分転換しておいで」と出かけさせてくれた夫に感謝。絵巻は観られなかったけれど、今暮らしている町の心地よさに気がついた、私にとっては新たな「発見」の1日だったかも。