発想の転換

ここ1週間ほど、京子は完全に昼夜逆転している。深夜2時頃から朝6時頃まで、何度おむつを換えても何度おっぱいをのんでも30分とたたないうちに泣き出す。昼間はすぐに1人で寝られるのに、夜中から朝にかけては布団に寝かせると泣き出す。抱っこするとほっと安心した表情になり、泣きやむ。…ということは、一晩中京子を抱っこしていなければならない…。私の場合は座って抱っこすれば泣きやみ、私の胸に顔をくっつけて満足げに目を閉じているのだが、夫の場合は座って抱っこしているだけでは京子はご不満のようで、抱っこして歩き回らなければ満足しない。…ということは、夫の場合は一晩中京子を抱っこして狭いマンションの部屋の中をウロウロと徘徊しなければならない…。京子は空が白みはじめた頃にようやく寝つき、8時頃に一度起きるがその後は午前も午後もぐっすりである。…夜こんなふうに寝てほしい、と昼間の京子の安らかな寝顔を見ながらつくづく思う。
月曜日、夕食を食べ終えた頃から頭の後ろのほうがズキズキと痛みだした。積もりに積もった睡眠不足であろう。その夜は夫に京子を託し、寝室のベッドでやすませてもらった。朝5時半、夫が京子を抱いてヨロヨロと寝室に入ってきた。「…一睡もしてへん…」。京子を抱いて一晩中リビングを徘徊していたのだろう、仕事があるというのに夜を徹して京子をみてくれた夫に感謝である。頭痛はまだおさまっていなかったけれど、夫のおかげで少しまとまった睡眠のとれた私が交代して母乳を飲ませると、京子はコロッと寝た。やれやれ…。
朝になっても頭痛の治らない私を心配して、夫は会社帰りに駅前商店街の漢方薬局で「若甦(じゃっこう)」なる栄養ドリンクを買ってきてくれた。私は「授乳中に飲んでも大丈夫な頭痛薬を買ってきて」と頼んだのだが、その漢方薬局で聞いたところ鎮痛剤は母乳に出るし、私の場合の頭痛はまず間違いなく疲れや睡眠不足からきていると思われるので「若甦」をお湯で割って飲むと体も温まってよいだろうとのこと。「若甦」のお湯割りを店頭で試飲させてもらって帰宅した夫は早速私にも「若甦」のお湯割りを作ってくれた。…効き目があったのか、その夜はいつもより体が楽だった。
それにしても、一時期のこととはいえ今の京子の昼夜逆転生活に今はなんとかついていかねばならない。夫は一生懸命協力してくれるが、朝になれば仕事に行かなければならないのだから夜は休んでもらいたい。だから夜は夫に頼ってばかりいられない。「若甦」を飲んで甦った私はハタと気づいた。夜「寝よう」とするからしんどいのだ。極めて単純なことなのだが。夜は「寝よう」とせず、京子と一緒に元気に起きていればよいのだ。幸い、今の私は朝仕事に出なければならないわけではなく、世話をしなければならない家族は夫と京子だけである。昼間熟睡する京子と一緒に自分も遠慮なく寝ればよい。
…というわけで、昨夜も一晩中京子におつきあいし、朝8時に夫を送り出してから昼の12時半まで京子と一緒にグースカと寝た。午後は洗濯物を干したり部屋の中を片付けたりし、これからまた夜の決戦に備えてひと眠りしようかと思っているところである。
昼間にバトンタッチする人がいない核家族の子育てでは、そのときの子どもに合わせて思いきって発想を転換することと、マラソンを走るときのように長く力を持続できる無理のないペース配分を心がけることがポイントだろうか。
昨日の昼間、疲れていたので3人目の子を妊娠中の友人に電話をかけた。「夜泣くのもまあ、しばらくの間だけやからな〜」と友人。話している間も3歳と1歳のご子息2人の元気な声が電話ごしに聞こえてきた。現在新居を建築中で出産前に引越しをすませるという友人に「大変やなあ」と言うと「まあなんとかなるやろ」。…この彼女の、のほほーんとしたペースに私は今まで何度救われてきたことであろうか。そんなに思いつめんと気楽に考えたらいいんや〜…と。いつもありがとね。