旅立ちの日に

tamago-ayako2006-03-14

今日から臨月。36週目のこの1週間を過ぎれば、37週の来週からは正期産の時期に入る。あと少しだ。無理せず体を大事に過ごそうと思う。

先週の金曜日は昨年担任した中学校の生徒たちの卒業式だったので、しみじみと感じることも多かった。
近年、卒業シーズンのこの時期に全国各地の学校で歌われている歌がある。「旅立ちの日に」という歌だ。新聞の記事によると「卒業式で演奏する曲」という最近の全国調査では「仰げば尊し」や「蛍の光」などを大きく引き離して1位だったそうである。
私がこの歌を初めて聴いたのは4年前。法律事務所の仕事を辞めて初めて勤務した中学校の卒業式だった。「旅立ちの日に」の前奏が始まるや、在校生や保護者、職員に向かってステージに立った卒業生たちの目からはもうすでに涙が止まらない。生徒の多くがタオルを握りしめ、むせながら歌っているのである。美しいメロディーにのった歌詞は素朴なのだが中学校での仲間との日々を次々と思い起こさせるあたたかみにあふれている。聴いているほうも心の底から揺さぶられ、本当に涙が止まらなかった。そんな歌だ。その後赴任した中学校の卒業式でも歌われたが、いつも不思議なほどに卒業生の心も聴く側の心も動かす歌である。
私が中学生だった頃にはこの歌を知らなかった。家に帰って6つ年下の妹に「すごくいい歌なんやけど知っとる?」と訊いてみると「知っとる知っとる、私らも中学校の卒業式で歌った。めちゃめちゃ泣ける歌やろ!」という返事だった。やっぱり泣いたのか…。
私が担任した生徒たちも今年、この歌を歌って中学校を卒業していったのだろうか。そう思いながら「旅立ちの日に」のピアノ伴奏を弾いてみている。


この歌は15年前に埼玉県秩父市の中学校で誕生した。当時校長だった小嶋登さんが作詞されたそうである。小嶋さんが定年退職を控えた1991年の3月、「何か卒業の記念になるものを」と音楽教諭の坂本浩美さんに提案されて一晩で歌詞を書き上げ、その翌朝に坂本さんが15分で曲を付けたそうだ。そして「3年生を送る会」で先生たちによって歌われ、披露されたのが最初という。その後、教員の研修会などで紹介されるうちに次第に評判になり、全国に広がっていった。
生徒とともに中学校で長年を過ごした先生たちの思いが不思議な力となってこもっているのだろうか、命が吹き込まれた言葉を感じる。
今朝、昨年担任していた生徒の1人から卒業を報告する手紙が届いた。いつも仲間を思いやり、毎日いろんなことに感動しながら、明るい笑顔でクラスを支えてくれていた彼女。「本当にいい卒業式でした」とつづっていた。手紙の最後はこんなふうにしめくくられていた。
「…4月からはついに高校生です…まだ実感がない…。時はどんどん進んでいってしまうので、卒業の感動にいつまでも浸っているわけにはいきません…。今やるべきことにしっかりと立ち向かって、頑張りたいと思います。」
偉い…と思った。前向きだなあ、と。彼女たちの歩いていく道に多くの幸せがありますように。いや、彼らは必ず自らの力で日々を創りだしていく、そう思う。